ライドシェアサービスが解決している課題について考えた

今回は、両社のサービスの違いや株価について書いていません。ライドシェアリングサービスは、車社会が生んだ課題を解決している。だからこそ、ライドシェアリングサービスを提供する企業がIPOを果たした。そう改めて実感したので、その気持ちを整理するために書きます。

ライドシェアリングサービスの現在

ライドシェアサービスとは、アプリ上で、ドライバーと利用者をマッチン グするサービスです。ライドシェアサービスが話題になったのは5年以上前でしょうか?2019年は、普及した結果として『Uber』『Lyft』ともにニューヨーク証券取引所に上場(IPO)しました。同時に、運転手が乗客を暴行する事件が発生し、社会問題化され株価にも大きく影響を与えました。

最近では、コロナウイルス感染症の問題もあり、各社が相乗りサービスの一時停止を発表しました。

ライドシェア専用乗降場所によって、位置情報精度の課題を解決している

サンフランシスコ国際空港には、『Ride App Pickup/Drop Off Zone』がある

米国のライドシェアリング企業である『Uber』『Lyft』を利用する以前から、中国では『DiDi(滴滴出行)』を利用したことがあります。また、シンガポールでも同様のサービスを利用したことがあります。なので、ライドシェアサービス自体に新鮮さは特別感じませんでした。

しかし、サンフランシスコ国際空港に到着して驚きました。『ライドシェアサービス専用の乗降スポット』が公式に用意されていたからです。

位置情報の精度は通信環境に依存する

ライドシェアサービスは、ユーザーのスマートフォンが保持している位置情報データを元にして、乗降場所を設定します。しかし、通信環境が悪い場合はユーザーが想像している現在地とスマートフォンがプロットする現在地がズレてしまうケースがあります。

頻繁に訪れる場所であれば、周辺の店舗や道路をヒントに、ユーザーは正しい現在地にピン(乗車希望場所)をずらすことができます。しかし、土地勘のない場所だとピンの設定をミスしてしまい、その結果、ドライバーを捕まえることができないケースもあります。(この場合、評価が低くなったり、乗車費用が高くなったりする)

ライドシェアサービスに使われるデータは新鮮な位置情報データ(リアルタイムに収集されたユーザーとドライバーの緯度・経度情報)が鍵を握ります。「実際のあなたの現在地とスマートフォンが示している現在地が一致しません」と指摘してくれるAIなんてありませんから、空港のような『土地勘のないユーザー』のために専用の乗降場所があることは、社会インフラとして浸透している証だと感じました。

相乗りサービスによって解決される課題

相乗りサービスとは「一人のドライバー(車両)に対して複数人のユーザーが同時に利用する(相乗り)」サービスです。このサービスを実現するためには、危険なユーザーが同乗しないスキームを作ることはもちろんのこと、『巡回セールスマン問題』で有名な『組み合わせ最適化アルゴリズム』をリアルタイムに実装する技術力が必要です。

巡回セールスマン問題(じゅんかいセールスマンもんだい、: traveling salesman problem、TSP)は、都市の集合と各2都市間の移動コスト(たとえば距離)が与えられたとき、全ての都市をちょうど一度ずつ巡り出発地に戻る巡回路のうちで総移動コストが最小のものを求める(セールスマンが所定の複数の都市を1回だけ巡回する場合の最短経路を求める)組合せ最適化問題である。

巡回セールスマン問題 – Wikipedia

ユーザーにとっては、一人で一台の車両を独占し目的地に向かうコストよりも、相乗りサービスを利用したコストのほうが安くなるため、ユーザーは『多少移動時間が長くなるが、交通費が安くなる』という選択ができます。

ライドシェアサービスは、ぼったくりタクシーの被害を撲滅するソリューションではあるものの、移動にかかる費用を直接的に安くするソリューションではありません。ですから、『組み合わせ最適化アルゴリズム』を実装することによって、自社のライドシェアサービスに対するユーザーの悩みを解決したと言えるでしょう。

交通渋滞やCO2排出量問題を解決している

(視野の狭さをディスられたことで始まった旅ですから)視座を上げてマクロに考えてみると、相乗りサービスは、1車両:N人のユーザーを実現しています。ですから、1道路あたりの車両数Nを減らすことが可能です。ドライバーにとって収入面で問題は起こりそうでしょうか?恐らく大きな問題ではないでしょう。これはビジネス職による最適な価格設計で解決できるはずです。

相乗りサービスの社会的なインパクトは「1道路あたりの車両数Nを減らすことを実現した結果、「交通渋滞やCO2排出量」についての社会問題を解決できていることです。

自動車の価値が「移動手段」という道具から、消費者の所得が増え「趣味・嗜好品」に変化したとき、自動車は「地球環境を悪くしてしまう」「交通渋滞の発生数を増やす」ことで「1人あるいは1家庭1台の車社会」を実現しました。消費者目線で考えれば、所有欲を満たせます。また、自動車メーカにとっても販売台数を増やせます。販売台数を増やせば売上高は伸びるため、企業価値(株価)が上がります。

当初、私はライドシェアサービスは「ぼったくりタクシーによって被害を受ける観光客」や「車がないと移動できない地域に住んでいるけど、車を買うことができない市民」を救うために存在していると考えていました。

しかし、自動車メーカーが販売台数を優先することによって、あるいは、消費者が所有欲を優先したことによって生まれた「渋滞による移動時間の非効率化」という課題を解決している点が、今の時代にマッチしているのかなと思うようになりました。この課題は、所有欲優先で全体の移動効率を無視した結果です。

自動車メーカーは販売台数をKPIにしています。しかし、販売台数が増加した結果生じる交通インフラの課題について、ソリューションを提供していないように感じます。(渋滞情報をカーナビで知らせるサービスくらいなら思い浮かびます)これは、やはり自動車メーカは『製造業』であり『サービス業』として交通のエコシステム(より多くの人が幸せになるための効率化された循環型の仕組み)を作っていなかったから、でしょうか。

improve people’s lives with the world’s best transportation.

この文章は米国「Lyft(リフト)」のミッションです。日本語に翻訳すると、「世界最高の交通サービスで人々の生活を改善する」という意味になります(多分)

Lyft’s mission is to: improve people’s lives with the world’s best transportation.

https://investor.lyft.com/ より引用

『乗る喜び』『乗り心地』といったドライバー視点のニーズを追求して自動車を作るメーカーとは明らかに見ている視点が違うことに気付かされます。

誤解を与えないようにしたいので補足すると、私はお金があればカッコいいと思う自動車を所有したい20代です。時間があればドライブだって沢山したいです。日本の自動車メーカーの車が海外で走っている姿をみると、自分がその自動車を作ったわけでもないのに、勝手に日本人であることを誇りに思うくらいです。

「今更ライドシェアサービスについてかよ!」という感じですが、『ガソリン車か電池自動車か』といった自動車の開発手法とは別に、車社会になったことで人々の生活には別の課題(車体価格と所得の不均衡・交通渋滞など)が生まれていて、特に、ライドシェア(相乗り)サービスは、真摯に向き合うメーカーがいなかった(少なかった?)移動時間の非効率化が進んでいる車社会の課題をピンポイントで解決したサービスになっているんだなと思ったのです。

『同じ領域にいるが、他人はあまり気づいてない、あるいは真剣に取り組んでいない課題』に対して取り組むことで、自分も役に立てる場所を見つけることができるのでは!と勝手に勇気をもらいました。新規サービス開発関連の書籍によく書いてあるものの腹落ちしていなかった部分が腹に落ちた感じです。

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